脳科学者はかく稽ふ

丸山眞男にはなれない・・・
分野は違うとはいえ，アカデミズムの世界に入り，弟子たちを指導する中で，時折，そう思うことがあった。

丸山眞男（1914 - 1996）の言説には批判も多くあったが，私の中では「あるべき学者・指導者」であり，「日本の知性」であった。そして，知性の素晴らしさとその限りない広がりを，私は丸山眞男に見てきた。

自分の中に「丸山眞男にはなれない・・・」という思いがある限り，逆説的にだが，自分は前に向って歩んでいると思っていた。しかし，その思いも，もはや途絶えつつある。

そして，私は，今の日本に「丸山眞男」を全く見ることができない。

この二重の絶望の深淵を，うまく伝えることはできないが，「死に至る病」（キルケゴール：Kierkegaard，1813 - 1855）であることは確かだと思っている。