昨日（5日），例の「ホンマでっか!?TV」のスペシャルが放映された。
自分の出ているTVは観ないようにしているのだが（恥ずかしいので），この回はスペシャルで長かった（4時間半！）いうこともあって，多少観てしまった。
その中で，「男性のペニスの長さは背の高さと人差し指の長さと相関する」という主旨のことを述べたのだが・・・。
この話は当然ながら原著論文を参照しており（Mehraban et al., 2007,2010），「人間の巨大ペニス問題」という人間の性選択上の問題と深く関係している－－ヒトのペニスは，身体の大きさで補正しても（しなくても），霊長類中最大であり，それはなぜか？という問題である。
この問題は精子間競争との関係で既に解かれていたはずなのだが，「背の高さとの相関」「人差し指の長さとの相関」ということから，排他的ではない別の仮説が導かれる。
「人差し指の長さとの相関」は，Hox遺伝子と関係し，「背の高さとの相関」は「女性は背の高い男性を好む傾向がある」という別のデータと関係する。そして，そのどちらも女性の好み（female mate preferences）による性選択，つまりfemale choiceの寄与を示唆している。
さらに，20～30％の女性は大きなペニスを好むことが示されており（Francken et al., 2002），この点からもfemale choiceの寄与が示唆される。
つまり，乱婚で重要になる精子間競争だけではなく，一夫多妻制に結びつくことが多いfemale choice が「人間の巨大ペニス問題」に関わっていることが示唆されるわけで，これはヒトの婚姻関係・社会構造の進化との関係でかなり興味深いことである－－当然ながら恋愛にも深く関係する。
こうした問題意識の中で上記のような発言をし，その後に，今述べたようなことを話し，池田先生もfemale choice の重要性を踏まえてフォローして下ったのだが，OAではこの辺は全てカットされていた。
これでは，「人間の巨大ペニス問題」に関する一連の生物学的議論を知らない視聴者には「単なる下ネタ」で終わってしまう・・・。
実際に，この編集のされ方ではそうである。一見「下ネタ」だが，そこには，私たち人類の進化のナゾが秘められていて・・・，という流れが全く欠落しており，これでは私は単なる「下ネタ好きおっさん」になってしまっている。
当該番組がゴールデンに移行してからは，このようなこと－－言葉尻だけが放映され，その前後のロジックや問題の所在，科学的広がりがカットされる－－が度々あり，それで「もう辞退したい」と申し入れた経緯がある。
今回はその典型で，まさにdisappointedされてしまった。
原理とロジック，そして問題の所在を重視する科学的言説よりも，私の不得意とする「面白い現象論的話題」の方が当該番組には合っているのかもしれない。
だとすれば，あくまでも科学的言説を重視したい私は，当該番組にはやはり不適切だとも言えて・・・，なので，今後の出演は・・・，悩ましい。
