未だに出させて頂いている番組（ホンマでっか!?TV）で，某美人女優K.K.さん（すぐに分かるだろうから，あえて記載すると，北川景子さん）の「人生相談」との関係で「顔の幅」の話をした。
K.K.さんは確かに美人である。顔に関する黄金比率「36/46」を持っていることも，確かめた。
ただ，「K.K.さんの顔の幅が広い」という私の指摘の「科学的意味」が（番組編集のせいか）上手く伝わらなかったようなので，この場を借りて，補足を。
「顔の幅」とは，その番組でも図示されていたように，正確には，顔の幅と高さの比「facial width-to-height raito，fWHR」のことで，「眉毛の下での顔の幅」と「眉毛の下から唇の上までの高さ」を割った値である（ただ，測定方法には研究者によって多少の違いがある）。
私のfWHRは（右の図のように図ると）約1.84で平均的である。
このfWHRが大きいほど（顔の幅が広いほど），リーダーシップや優位性・支配性，あるいは攻撃性が高いことや，男性ホルモン（テストステロン）が多いことが以前から示されてきている。
端的に，CEO（chief executive officer）や優位な政治家は概してfHWRが大きい。サルでも同様らしく，アルファ個体はfWHRが大きいという報告がある（つまり，fWHRとリーダーシップとの関係は進化的に根強いらしい）。
女性の場合，fWHRと攻撃性との関係はあまり深くないが，リーダーシップや優位性とfWHRとの関係はある。また，fWHRが大きいと，周囲から優位（支配的）に見られたり，あるいは，周囲に威圧感を与えたりする傾向が強い。
K.K.さんは「周りから怖がられる」「あまり誘われない」という悩みをお持ちのようで，それで，彼女のfWHR を写真から計算したところ，2.21 もあった（ただし，写真なので誤差はある）。女性の平均的範囲は1.8～1.9 なので，この値は例外的といってよいほど大きい。
ちなみに，アメリカの歴代大統領（調べられたのは29人）のfWHRの平均値（中央値も）は1.99，SDは0.116，最小値は1.78，最大値は2.30，２番目は2.18 である。政治のリーダーは一般にfWHRが大きいが，K.K.さんは歴代アメリカ大統領のトップ２程度でのfWHRをもつことになる。
K.K.さんは確かに美人である。小顔系でもある。一見して「顔が広い」とは見えないかもしれないが，計算上，fWHRはかなり大きい。そのため「周囲に威圧感を与える」「周囲から怖がられる」という性質をもつと推定できるわけだ。
もちろん，この種の印象が，fWHRだけに影響されるわけではない。ただ，「リーダーシップ」や「優位性」という，人間社会で重要な性質に関与する「顔の形態」との関係で，fWHRが注目されてきていることを示したかったのである－－眼や眉毛の角度や形は，この種の性質（印象ではなく）には無関係。
ついでに言えば，胎児期で浴びた性ホルモン（それによる，脳の性的性質）を推測するために2D：4D比（人差し指の長さを薬指の長さで割った値）が注目されてきたが，2D：4D比では「思春期以降の中・短期的な性ホルモンを推定できない」という弱点がある。
その一方で，fWHRは胎児期での性ホルモンとはほとんど無関係だが，思春期以降の中・短期的な男性ホルモンを推定できるらしく，この点でも意味がある（ただし，現時点では，この点には疑義もある）。
性ホルモンとの関係はともあれ，顔の幅（fWHR）が，社会性動物での特徴である「リーダーシップ」「優位性」という性質に深く関係することは間違いない。さらに，fWHRは経済的意欲・達成度や政治的意欲・達成度（あるいは，上昇志向や出世欲など）との関係も深いらしい。
こうしたことは，これまでの研究では，女性よりも男性で目立つので，K.K.さんが通常以上の「上昇志向や出世欲」をもつかどうかは不明である。
しかし，主観とは無関係に「周囲から優位（支配的）な女性として見られてしまう」「威圧感を与えてしまう」ということは確かで，このことを，K.K.さんに伝えたかった次第で，他意はない。
ちなみに，K.K.さんとは（当然ながら）初めてお会いしたが，気さくで優しくて心配りのある素敵な女性だと思う。益々のご活躍を陰ながら応援したい。
顔の幅（fWHR）と攻撃性との関係（Carre & McCormick, 2008より）
